多くの日本人にとって、ネイティブの英語を聴き取るのは簡単ではありません。TOEIC® L&Rテストなども、リスニング部門が苦手な人が多いのではないでしょうか。
このリスニング能力を強化するのに効果的な勉強法のひとつが、ディクテーションです。ディクテーションを実践していくと、リスニングだけでなく様々な能力がアップします。
正しい手順と押さえるべき大事なポイントをお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
ディクテーションは、一般的にリスニングのトレーニングとして知られる勉強法です。しかし、実践していく上で自然とライティング、リーディング、スピーキングの練習にもなり、全体的なレベルアップにつながります。詳しくみていきましょう。
英語力を底上げするディクテーションとは?
ディクテーションとは、英語の音声を途中で止めながら、聴いて書き取る学習法を指します。書き取りは紙に手書きであっても、タイプするのであっても構いません。ビジネスパーソンにとっては、タイピングの方が速い場合が多いでしょう。
書き取った後は、内容をスクリプトと照合して、正しいか確認していきます。この作業により、自分が聴き取れなかった部分が明らかになります。こういうリズムの箇所が聴き取りにくい、など自身の弱点を認識して学習に臨むことが可能です。
ディクテーションの効果
リスニング力の向上
ディクテーションでは、英語を注意深く聴く必要があります。一般的に聴き取りにくいのは、単語の音がつながりやすい部分や短縮語、難しい単語などです。そういったところをくり返し聴き取る練習をすることで、耳が慣れ、パターンとして捉えていくことができます。このように、自分が聴き取りにくい部分を把握すれば、対策を講じることができます。
語彙力の向上
ディクテーションのメリットは、わからない単語の意味と発音を覚えようとするため、語彙力を高めやすいという点です。リーディング中に目で見つけたわからない単語とはアプローチが違うので、覚えやすいと感じる人もいるでしょう。また、もともと知っていた英単語であっても、それが英文でどのように使われ、発音されているかを再確認できます。覚え間違いしていたことをさらうきっかけにもなります。
読解力の向上
最初は単語を意識した聴き取りになりがちですが、書き取りに慣れてくると英文の構造をつかめるようになっていきます。文法力が上がることによって、英文を読むスピードが向上しやすくなります。また、聴き取れなかったときにこれまで学んだパターンから意味を予測するため、英文の主旨をつかむ力を身につけられるでしょう。
ディクテーションの基本的なやり方と教材選びのポイント
さっそくディクテーションにとりかかる前に、基本的なやり方をお伝えします。教材選びについても注意点がありますので、ひとつずつ確認していきましょう。
ディクテーションのやり方
音声を聴き、一文づつ書き取る
一文ごとに音声を止めて書き取っていきます。一番理想的な単位は、一文です。難しい場合は一句ごと、意味のつながりごとに区切るのがよいでしょう。いくつもの文を聴いてから書き取ろうとすると、聴き取れたとしても次の文へと意識がスライドしていくので、頭の部分は忘れていってしまう可能性が高いです。
答え合わせをする
ディクテーションは、答え合わせの作業も重要です。自分が書き取った文章と英文のスクリプトを照合して、どれだけの精度があったのかをまずつかみます。さらに、間違った箇所、つまり弱点を分析して認識することが大切です。答え合わせでスペルミスの発見もあるでしょう。
そして正しい文章を頭に置きながら、再度音声を聴いて正しく書き取れるかチェックします。間違えた単語は発音練習をすることで、口と耳から覚えます。音読はディクテーションにおいても有効な工程です。
教材を選ぶポイント
英文の長さ
ディクテーションのトレーニングでは、まず英文の長さを考えます。長すぎず、短すぎない英文を選ぶのがポイントです。一文ずつ区切って聴き取るのに、ちょうど良い分量がいいでしょう。具体的には、30秒~1分以内の英文に設定すると続けやすくなります。長すぎると集中力が途切れてしまいます。英語教育の場面では、時間のほどよさもあって洋楽の歌を素材とすることがよくあります。
英文のレベル
レベルにあった教材を選ぶことも、ディクテーションにおいて注意すべき点です。一般的には、英文を黙読した際に大まかな内容を理解できる程度のレベルが望ましいとされています。黙読でわからないものは、リスニングではもっとわからないからです。また、読解できても聴き取れない単語を把握しやすいという面もあります。
英語が上達してきたら、BBCなどのサイトにある、記事のテキストと音声データがフリーでダウンロードできるサービスを教材に使ってみるのがおすすめです。時事の単語が身につきます。
ディクテーションのお悩み別対処法
やみくもにはじめても、効果が上がりにくいのがディクテーション。聴き取りにくいのには理由があります。お悩みは大体4つに大別されます。
①知らない単語が多い
何回聴いても聴き取れない原因に、知らない単語が多い場合がよくあります。基本的に知らない単語だらけの教材は、レベルが合っていない可能性が高いです。一番の解決法はもっと簡単なものにすることです。ただある程度は、単語の意味・発音を調べて覚えてからディクテーションをすることでも対応できます。
②単語をつなげて発音している部分が聴き取りにくい
ナチュラルスピードの英語では、単語を一つひとつ区切るのではなく繋げて発音することが多いです。その際に前の単語の最後の音と次の単語の最初の音が連結したり、一方が脱落したり、違う音に変化したりします。慣れないと聴き取りにくいものです。しかし頻出パターンを頭にいれておけば、発音の変化を聴き取りやすくなります。
例)「would have」をウダヴといった具合にネイティブはhを発音しないのが自然です。
聴き取りにくかった部分は、重点的にシャドーイングやオーバーラッピングをして練習しましょう。
【シャドーイング】聴こえてくる英文を追いかけるように真似をして発音する英語の学習法
【オーバーラッピング】スクリプトを目で追いながら、聴こえてくる音声を重ねて発音する学習法
③前置詞、冠詞が聴き取りにくい
英語では、重要な言葉を強調することが多く、メリハリをつけて話します。そのため、比較的意味が薄い前置詞や冠詞などは強く発音されないことが多くなり、聴き取りが難しいことがあります。対策としては、くり返し聴くこと。それによって微細な発音の違いを聴き取れるようになっていきます。また、意味を理解しながら聴くと、自然と正しい単語を推測できるようになっていくものです。文法を勉強しておくこともリスニングの助けになります。
④スピードが速い
英語が速すぎて、理解するスピードが追いつかないことがあります。まったく聴き取れないのでは、練習の意味がありません。発音のスピードがもっと遅い教材からはじめて、慣れていくことがポイントです。便利なのは、音声スピードを調整できるリスニング用のアプリ、音楽プレイヤーといったもの。これらを利用し、自分が聴き取れそうなスピードまで一旦下げます。聴き取れたら、徐々にスピードを速めて聴いてみましょう。段階を追ってステップアップしていくと耳が慣れていきます。
くり返しの作業が英語耳をつくる
ディクテーションはなかなか根気のいる作業です。聴き取れなかったものをくり返し聴くのにうんざりすることもあるでしょう。しかし、くり返し継続してトレーニングすることで、必ず「英語耳」ができていきます。 新しいものだけを常に聴いていくのではなく、復習でも力がつきます。「継続は力なり」で、各種アクセントの英語を聴き取る耳を育てていきましょう。